新聞を読んで(2)AIブーム、光と影 技術革新は何のため、問い直す時


 編集委員・堀篭俊材(記者解説) 朝日新聞朝刊1月13日号より
 「5年後には、有人のバスやタクシーと遜色(そんしょく)ない自動運転が実現できる」そんな夢の世界を現実に近づけているのは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれるAIの技術だ。深層学習は、コンピューター自身が学んで賢くなる機械学習の一種。人間の脳の神経回路を模した層を重ねる様から「深層」と名づけられた。膨大なデータからルールやパターンを見つけ出すのが得意だ。
 ■日本の雇用1000万人、代替されるリスク 開発人材は不足、社会分断の恐れ
 今のAIは人間にとってかなり難しい仕事はできないし、逆に、とても簡単な仕事もこなせない。ビジネスを企画したり、他人と交渉したりできないだけでなく、拭き掃除や、ものを取ることもままならない。その中間にあるデスクワークのような定型的な仕事は、AIに取って代わられる可能性がある。
 OECDの最新の調査では、日本は労働人口の15%、約1千万人が代替される恐れがある。一方、AIの開発などを担う人材は不足する。政府は新年度から、小学校でプログラミング教育を必修化。大学卒業生が初級レベルのデータサイエンスを習得することもめざす。
 しかし、経済産業研究所の岩本晃一・上席研究員は「自動化の脅威にさらされる非正規社員や事務職が、AIの高いスキルを求められる仕事に就くことは難しい」と指摘。「再就職をあっせんするしくみを考えるべきだ」と強調する。AIにないコミュニケーション力や読解力を子どもたちが身につけたり、社会人の「学び直し」を支援したりすることも大切だ。

 知らないうちに、機械学習→深層学習の技術が進み、AIは飛躍的な進歩を遂げた。その結果、社会で必要なスキルが複雑化・多様化し、「英語を学ぼう」「プログラミング学習」「アクティブラーニング」・・・思考力・読解力・・・あれもこれも、やろうとなってきた。

機械学習・・・コンピューターによる学習。人工知能の一分野であり、人間がもつ学習能力と同じく、コンピューターも経験から学習し、将来予測や意思決定を実現できるようにする技術や手法を指す。マシンラーニング。
*ビッグ‐データ(big data)・・・膨大かつ多様で複雑なデータのこと。スマートホンを通じて個人が発する情報、コンビニエンスストアの購買情報、カーナビゲーションシステムの走行記録、医療機関電子カルテなど、日々生成されるデータの集合を指し、単に膨大なだけではなく、非定形でリアルタイムに増加・変化するという特徴を持ち合わせている。