「安売り王一代(安田隆夫)」を読んで(2)究極のネガティブモード脱出法

 慶應義塾大学法学部を出たあと、入った会社がオイルショックのあおりを受けて潰れてしまった。10か月で失業者になった。その後は、麻雀でその日暮らしの生活・・・これではいけない・・・・(P29)そんな内容の後、以下の文章が来る。

 究極のネガティブモード脱出法(P32)
 かつてないほど落ち込んだ私が、その時に会得した、究極の「ネガティブモード脱出法」を紹介しよう。この方法は私が窮地に陥るたびに実際に何度も繰り返してきたもので、その効果は保証する。
 まず、休暇をとる。4、5日もあれば十分だろう。一人で自宅に引きこもるのである。昼聞から雨戸やカーテンを閉めきり、じっと何もせずに過ごすのだ。外出は厳禁。散歩はもちろん、買い物もダメ。食事は買い置きや出前で済ます。テレビやラジオもつけずに外界の情報や気晴らしになるようなものはすべてシャットアウトする。できれば布団をひっかぶって、陰々滅々とした環境の中、仕事のこと、人生のこと、将来のことを徹底的に考え抜くのである。
 あなたの脳裏には、さまざまな思いが去来する。過去を思い出しては他人を恨んだり、嫉妬したり、将来を考えては怖気づいたり、不安になったり……。自己嫌悪、欲求不満、怨み、恐怖……そうした情念にとらわれ、気持ちが深く沈みこんでゆく。しかし、決してそこから逃げてはならない。ひたすら悶々と、布団の中で落ち込むだけ落ち込むのである。この状態を3日も続ければ、突然、鬱々とした気分が劇的に晴れる時が来る。
 こうして落ち込みが底を打った時、人間は一挙に浮上する。凝縮された危機感が臨界点に達して爆発を起こし、強力な浮力になってその人を引き上げるのである。
「一体、俺は何をしているのか。このままではダメになる。思い悩んでいる場合じゃない。俺はやりたい、やらなきゃならないんだ……」
 そういう押さえ切れないパワーとエネルギーが、内からみなぎってくるはずだ。 いかがだろうか。われながら過激な性格だと、思わず自分でも笑ってしまう。
 ここに紹介したネガティブモード脱出法の最大のポイントは、自分をマイナス状態からブラスヘと引き上げるためには、自分にとって好ましくない状況から決して目を背けず、それをあるがまま受容する心境にまずはなれ、ということである。
 そのための方法論として、外界との情報のやり取りをシャットアウトするのが、一番効果的なのだ。(中略)
 ともあれ、私はそうして一念発起し、まずは金を貯めて独立することにした。20代も終盤にさしかかった頃である。

 

  「まずは状況を受容すること。間違いなく、それが立ち直りのきっかけになる。」そうなのだ。今のあるがままの自分を受け止める。それが新しい出発点だ。
 自問自答してみよう。
(1)今の状態は最悪か?もっと悪いときだってあったはずだ
(2)もうどうにもならないのか?
(3)だれかに助けを求めたか?違う見方があるかもしれない
(4)これからどうするのか?出来ることは何?
(5)今自分には何ができるのか?
(6)人や社会のせいにしていない?

 話は少しずれて、今、沢尻エリカさんが、世間の耳目を集めています。昔、彼女がドラマ「1リットルの涙」の主演をしたころのことを思い出しました。その原作の作者 木藤亜也さんの詩を紹介します。彼女は「脊髄小脳変性症」という難病で苦しみ、1988年に25歳10か月でなくなっています。彼女の生き様が私の心を打つのです。

いいぢやないか!
いいぢやないか!
ころんだって、
また 起きあがればいいんだから。
ころんだついでに仰向いて
空を見てごらんよ

青い空が
今日もお前の上に限りなく
微笑んでいるから

わたしは生きているんだ。

先生や友人から受けた教えを生かして 社会の役に立ちたかった。
たとえどんな小さな弱い力であっても 喜んで与えたかった。
お世話になった せめてもの恩返しにしたかった。

わたしひとりあぶれたと恩うとつらくなるから
天使の仕事をしようと考えた。
落ちているゴミを拾うこともできるし
窓を閉めることだってやれる。

やろうと恩えばできることがいっぱいある。 
(お手本なしの人生 1リットルの涙 亜也の詩 より  前半部分)