心の病と発達障がいを考える(2)自殺予防

 心の病と発達障がいを考える(2)
  うつ病と健康の境界はどこにある?川本 静香 (立命館大学活動研究報告より)を読んだ。いろいろなことを研究している人があるものだと感心した。

  うつ病は「心の風邪」といわれるほど誰にでもなる可能性がある。しかしその軽妙な喩えとはかけ離れた深刻な結果をもたらす危険のある疾病でもある。近年日本では自殺の重大なファクターとしてもうつ病が注目されている。うつ病に焦点を当てて研究する川本静香によると、日本のうつ病患者(躁うつ病を含む、気分障害)は100万人を超えている(厚生労働省「患者調査」、2014)。加えて、うつ病を原因とする自殺の件数は、健康問題を原因・動機とする自殺者全体の4割を超え、2016年度には4,496件となっている厚生労働省「自殺の統計」、2016)。

 先進国でも高い割合を占める日本の若者の自殺率。未来がある若者が、将来に希望を持てない社会が私たちにとってもいいはずがない。自殺の原因を突き止め、対策をとり、希望あふれる社会を築き上げるためにはどうすればいいのだろうか!まずは、自殺しなくてもいい社会をつくること!!だろう。

  川本は「うつ病予防は自殺予防対策としても重要である」との観点からとりわけ青年期後期のうつ病予防について研究している。(中略) 「症状によって明確な差が見られた項目の一つが『自殺念慮』です」と川本。重症度の高い者ほどこの項目が高く、異常なレベルの抑うつ症状を抱えていることが示唆されたという。さらに「興味喪失」「活力喪失」「集中困難」「睡眠習慣の変化」「食欲の変化」などの項目にも有意差を見出した。「これらは日常生活、とりわけ勉学や仕事を行う際に支障をきたす症状です。社会的、職業的な機能に障害が生じるというのはうつ病の判断基準の一つであることからも、アナログ群と言えども軽く見るべきではないと言えます」と分析した川本は「こうした研究がうつ病の早期発見や予防につながればいい」と語る。
*『うつ病アナログ群』・・・

抑うつ症状を抱えながら、うつ病として専門機機関にかかるまでには至っていない集団


 しかしうつ病を早期に発見したとしても、それが精神科や神経内科の受診につながらないケースが多いことも川本は問題視する。「日本ではうつ病経験者のうち医療機関を受診した人は約3割しかいないという報告もあり、受診率の低さが指摘されています」。川本は大学生を対象に受診行動に影響を及ぼす要因を探索し、

①「時間経過による自然回復」を期待する、

②「周囲への相談と受診の面倒さ」、

③「疾病との関連付けの難しさ」、

④「精神科に対する抵抗感」

という4つの要因を明らかにしている。

 

 たしかに、日本では精神科に対する社会の目は冷たい、何か異質なものを見る目だ、異質なものを排除してきた農耕民族の特質だろうか!また、人を思いやる気持ちの弱体化だろうか?余裕のない社会の生だろうか?足並みを揃える、出る杭は打たれる、同一歩調、共通理解共通行動、・・・最近覚えた プロクルステスの寝台 かな

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うつ病患者数

世界大百科事典 第2版の解説 プロクルステス【Prokroustēs】
 ギリシア伝説で,メガラからアテナイへの街道に出没した強盗。その名は〈引き延ばす男〉の意。捕らえた旅人を自分の寝台に寝かせて,その身長が短すぎると槌でたたくか重しをつけるかして引き延ばし,長すぎると,はみ出た分を切り落とした。現在でも杓子定規,容赦ない強制の意で使われる〈プロクルステスの寝台Procrustean bed〉はこれに由来する。